アシックスはなぜ復活した?売上1兆円を目指す技術と売り方

アシックスが売上高1兆円へ、というニュースを見ると「そんなに伸びているの?」と気になりますよね。復活の背景には、競技で磨いた技術を街履きへ広げたこと、商品の良さが伝わる販売先を育てたこと、経営体制の改革があります。

『ヨハクシロ』のテツです。僕が引っかかったのは、ネットで直接売る方が効率的に見えるのに、それだけではうまくいかない点。2026年10月12日に確認した決算資料をもとに、数字の意味と両社の違いを見ていきます。

目次

売上1兆円は、もう達成した数字?

ここは先に整理しておきたいところです。アシックスが2026年8月14日に示した2026年12月期の連結売上高予想は、1兆500億円。年間の実績が確定したわけではなく、年末までの事業を見込んだ会社予想です。

2026年1〜6月の売上高は約5,344億円で、前年同期比32.7%増でした。上半期の好調を受け、年間予想を9,500億円から引き上げています。「1兆円へ」という見出しには、こうした予想の更新があるんですね。

ただ、半年で5,000億円を超えたから、単純に2倍すれば年間予想になるわけではありません。販売の季節差や下半期の需要もあります。実績と予想を混ぜないだけで、ニュースの勢いを落ち着いて受け止められます。

走る靴だけで伸びたわけではない

アシックスと聞くと、マラソンや部活動の靴を思い浮かべる人もいるはずです。でも成長を押し上げたのは、それだけではありません。2026年上半期は、日常向けのスポーツスタイルとオニツカタイガーが大きく伸びています。

スポーツスタイルの売上高は前年同期比83.0%増、オニツカタイガーは35.9%増。競技向けのパフォーマンスランニングも19.3%増でした。街履きが急成長しつつ、走る人に向けた事業も伸びているのが特徴です。

オニツカタイガーは国内の訪日客需要が成長要因ですが、それで全社の好調を説明するのは無理があります。スポーツスタイルでは北米や欧州の伸びが目立ちます。同じ会社の中でも、売れる場所と選ばれる理由が違うんです。

昔のランニングシューズが街で選ばれる理由

面白いのは、過去の競技用シューズが日常のファッションにつながっていること。たとえばGEL-KAYANO 14は、2008年のランニングシューズを土台に、2020年にライフスタイル向けとして復刻されたモデルです。

復刻版では、衝撃を緩衝するGELなどの機能や構造を残しながら、甲の素材とフィット感を街履き向けに更新しています。昔の外観を戻すだけでなく、使われる場面に合わせて作り直している。ここが興味深いところです。

僕は、競技で積み重ねたものが別の用途で評価される点に、この話の面白さを感じます。ただし、街履き用の復刻モデルと競技用の現行モデルは別です。同じシリーズ名でも、走るための靴として一括りにはできません。

専門店は、商品の良さを伝える場所になる

ネットなら多くの商品を一覧で比べられます。でも、クッションの感触や足との相性は、写真と説明だけではつかみにくいですよね。機能が複雑なランニングシューズでは、試着や接客が選ぶ理由につながります。

集英社オンラインの報道は、アシックスが北米のランニング専門店との関係を強化した点に注目しています。欧州側の公式発表でも、2026年第2四半期に卸売チャネルが前年同期比44.1%伸びたことが示されています。

この欧州の数値はオニツカタイガーを除く対象で、北米専門店のシェアと同じ指標ではありません。それでも、小売店との連携が成長の一部になっていることは読み取れます。専門店は、単なる商品の置き場所ではないんですね。

じゃあ、直接売るのは間違いなの?

このニュースから「卸売が正解で、直販は失敗」と考えると、少し話を単純にしすぎます。直販はメーカーが自社の店舗やネットショップで販売する方法。商品の見せ方を整えたり、顧客との関係を深めたりできる利点があります。

アシックス自身も直販を使っています。IR BOOK 2024では、2024年のDTC比率が42.1%だったと示しています。専門店を大切にすることと、自社で売ることは両立する。アシックスを卸売だけの会社とは捉えられません。

問題になるのは、どちらかの販売方法そのものより、役割の組み合わせです。専門店で相談したい人、自社店舗で世界観を楽しみたい人、ネットで買い足したい人。同じ商品でも、購入までに欲しい体験が違います。

ナイキは2025年の減収だけで判断しない

ナイキの2025年5月期の連結売上高は約463億ドルで、前期比10%減でした。直販の売上高も13%減で、デジタル販売の落ち込みが目立ちます。ただ、卸売も減収だったため、不調を直販だけに絞ることはできません。

その後の2026年5月期は、連結売上高が約464億ドルで、ドル建ての報告値ではほぼ横ばいです。卸売は6%増、直販は6%減でした。落ち込みが続く部分と、持ち直した部分があるので、2025年の数字だけでは足りません。

2026年10月1日発表の2027年5月期第1四半期では、連結売上高が前年同期比4%減でした。対象は2026年6〜8月です。年度名だけ見ると未来の話に見えますが、実際には確認時点までに終了した四半期の決算なんです。

復活を支えたのは、社内の役割変更もある

売れる靴が出れば復活できる。そう考えたくなりますが、商品を企画してから売るまでの動きも関係します。アシックスは2019年にカテゴリー経営体制を導入し、商品分野ごとの責任を明確にしてきました。

会社の説明では、カテゴリーの責任者が企画・生産・販売までを担う体制です。作る部門と売る部門が別々に動く状態を見直すことで、どんな商品を、どの市場で、どう売るかをつなげる仕組みに変えています。

ここから先は僕の受け止め方ですが、技術があることと、その価値を届けられることは別なんですよね。スポーツスタイルや競技用など、それぞれの客に合う届け方を考えられる体制が、成長を支える土台になったと見られます。

売上が増えたら、利益も同じだけ増える?

売上の勢いを見るとき、僕は利益も気になります。たくさん売れていても、大幅な値引きや費用増で利益が残らない場合があるからです。アシックスの2026年上半期は、営業利益が約1,204億円で前年同期比48.5%増でした。

営業利益は、本業の売上から売上原価や販売管理費を差し引いたものです。この期は売上高より営業利益の伸び率が大きく、営業利益率も22.5%へ上昇しました。売れる量の拡大に加えて、収益性の改善が数字に表れています。

ただし、円安の影響もあります。為替の変動を除くと、上半期の売上高の伸び率は22.0%です。成長が為替だけによるわけではありませんが、32.7%という見た目の増収率を、そのまま需要の増加率とは呼べません。

業績の勝ち負けと、自分に合う靴は別の話

アシックスの成長から見えてくるのは、技術を用途に合わせて広げ、その良さが伝わる売り場を育てることの意味です。ただし、会社の売上が好調だから、そのブランドのどの靴も自分に合う、とはならないですよね。

公式のランニングシューズ比較でも、安定性、クッション性、反発性などでモデルが分かれています。街で履きたいのか、日々の練習なのか、レースなのか。ブランド名より先に使う場面を決めると、比較する対象が絞れます。

ナイキの苦戦も、すべての製品の性能が低いという意味ではありません。経営戦略のニュースとして読む面白さと、買い物の判断は分けたいところ。気になる一足があれば、用途に合うモデル同士を比べ、履き心地を確かめる所からです。

この記事の内容は、公開時点で確認した情報をもとにしています。内容は変更される場合があるため、必要に応じて公式情報や各サービスの案内もあわせてご確認ください。

この記事を書いている人

ヨハクシロ運営者のテツです。気になったことを調べ、確かめ、ときには実際に体験しながら記事を書いています。便利さや合理性だけではなく、ちょっとした寄り道や「ムダかもしれないけど面白い」ことも大切にしています。毎日に少し遊びしろが生まれるような情報をお届けします。

この記事をシェアする
  • URLをコピーしました!
目次